幸せは人それぞれ

子育ても終え、後は人生を謳歌するのみ!最大限にセカンドステージを楽しもうと日々模索しています。

『脱出記』スラヴォミール・ラウイッツ

 ネットサーフィンならぬブックサーフィンが好き。他の本について言及されているとそちらも気になって読んでしまう。次々に読んでいくうちに、予想もしていなかったような本に出合う。この『脱出記』にたどりついたのは、角幡唯介さんの『雪男は向こうからやって来た』で雪男の証拠の一つとして紹介されていたから。

 この話は地獄のシベリア収容所から逃げ出し、ツンドラ地帯を抜け、サハラ砂漠を横切り、ヒマラヤを超え、アフガニスタンまでたどり着いたという、壮大なノンフィクションである。もちろん途中で脱落者もでるが、人がこれほどの絶望にも耐えられるのかと圧倒される精神力だ。寒さに震え、暑さと喉の渇きに耐え、空腹に耐え、この世のありとあらゆる苦しみを乗り越えて生還したのだ。感動しないはずはない。

 先進国に生きていると、食べる飲むは当たり前で、その気になればいつだって口にできる。毎日水や食べ物のために働いているという感覚は皆無。それどころか、食べ物を口にしないことのほうが苦労する。そんな環境でぬくぬくと生きていると、食べ物がなければ死ぬことを意識しながら、しかし前進する以外に助かる道はないという壮絶な状況に言葉を失う。誰もが生きるために必死の過酷な大自然の中で山岳民族に助けられたり、水や食べ物を得るために働くという当たり前でいて忘れていることの重要性に改めて考えさせられた。

  しかしこの本の面白さはこれだけではない。なんと出版後に虚偽疑惑が発覚!BBCの記事によると、この脱出自体は事実ではあるが、この著者が他人の記録をパクッて出版したとのこと。言われてみると確かにこれだけ過酷な状況にもかかわらず、メンバー同士の衝突もない。生々しさに欠ける。しかも肝心の雪男の部分は、なんとパクった著者が付け加えた、つまり雪男というのはフィクション…というのが結論だと。この話を信じて雪男を探しにいったという人の話からこの本にたどりついたのだが、夢を壊すというのはこういうことなのか。